2020.08.22-30 11:00 – 19:30 浜松市鴨江アートセンター104号室
2020年度浜松市鴨江アートセンター制作場所提供事業 アーティスト・イン・レジデンス
主催:浜松市鴨江アートセンター(指定管理者:浜松創造都市協議会・東海ビル管理グループ)
Documentary Camera & Edit : Yasunori Ikeda
この作品は、私自身が2020年4月下旬から8月下旬にかけて浜松市内53カ所で録音・記録した音声を使って制作しています。
当時、新型コロナウイルス感染拡大により、人びとの行動が制限されはじめた時期で、私は自宅マンションの窓から聴こえてくる音を録音していました。遠くから届く、輪郭のはっきりしない、何かがさまざまに動いている“淡い音”。この淡い音をスピーカーで聴いていると、録音した過去の音なのか、外から聴こえてくる現在の音なのか、よくわからない曖昧な感覚になりました。
これまで私は、はっきりとした輪郭のある音を“良し”と考えていたため、この新たな体験に戸惑いつつも、とても貴重な瞬間に立ち会っている感覚を得ました。
サウンドインスタレーションでは、展示空間内に複数のスピーカーを設置し、市内で録音した音声を流しています。会場内に流れる録音した音声の上に、周囲から届く現在の音が幾重にも重なっていきます。名前の付けられない淡い音と現実の音が重なることで、過去と現在を曖昧にし、鑑賞者は新たな音の時間、風景を創造していきます。
本作品は、「音の日記」のようであり、音の風景(サウンドスケープ)のようでもあり、音で紡ぐ映像のない架空の物語のような作品です。 このサウンドインスタレーション音声が鑑賞者が持つリアルで濃密な風景を顕にし、鑑賞者ごとの記憶をもとに、それぞれの新しい物語と記録を創っていきます。
この作品は、空間内に設置された5つの作品からなるインスタレーション作品となる。

自宅の窓から録音した音を使った作品。外径の違うアルミパイプを窓辺に設置していて、筒の中をのぞきながら音を聴く。
鑑賞者は、金属特有の虹のような模様の先に、街の風景を見ることができ、足下にある小型のスピーカーから「家の窓」で録音された音声が流れる。
自宅の窓から録音した音を使った作品。
鑑賞者は窓辺に置かれた椅子に座り、外の風景を眺めながら録音した音声をを聴く。外から届く現在の音声と空間内に流れる過去の音声の重なりを体験する。
佐鳴湖で録音した音を使った作品。
スピーカーからは浜佐鳴湖周辺で録音された音声が流れる。
浜松市内のさまざまな場所で録音した音を使った作品。
鑑賞者が立っている場所によって、スピーカーから聴こえてくる録音した音や、外から入ってくる音の変化があり、それによって想起される記憶やイメージも変わってくる。
会場内に鑑賞者が自由に使える丸椅子を用意した。鑑賞者が自ら好きな場所に座って、ゆっくり音を聴くことができるようにしている。
今そこで聴こえる音を使った作品。
アルミパイプを窓辺に設置。鑑賞者は筒の中をのぞきながら外から届く音を聞く。